獣医療情報一覧

犬の去勢手術

去勢手術とはオスの睾丸である左右の精巣を摘出します。全身麻酔で行なわれます。 当院では去勢手術は日帰り手術です。(予約制)

手術は少なからず体に負担がかかります。 その負担を考えると去勢手術を希望されない飼い主様もいらっしゃると思います。 しかし去勢手術によって生殖器に関連する病気の予防、問題行動の抑制などのメリットがあります。

・メリット
1.望まれない妊娠の防止
2.病気の予防効果
■ 精巣腫瘍(特に通常の場所である陰嚢内にない場合はそのリスクが増加します)
■ 肛門周囲腫瘍(肛門周囲に出来る腫瘍の中には性ホルモンの影響を受けて発生するものもあります)
■ 前立腺肥大(中年期以降に性ホルモンの影響を受けて前立腺が肥大し排便や排尿が困難になることがあります)
■ 会陰ヘルニア(肛門周囲の筋肉が萎縮しその隙間から腸、膀胱など腹腔外に脱出し、排便排尿困難をきたします)
3.発情に関する行動から開放される。(尿マーキング、遠吠えなど))

・デメリット
1.手術自体のデメリット
全身麻酔のリスク。諸臓器への影響などによりごく稀に予期せぬ事態を招くことがあります。出来る限り麻酔リスクを避けるため 手術前の血液検査を行い、全身状態を確認しています。
短頭種(パグ、フレンチブルドックなど)は気道の入り口が狭いため麻酔覚醒後に呼吸困難を来たすことがあります。
2.肥満になりやすい?
術後、発情に伴う体、行動の変化がなくなるため必要とするエネルギー量が減ったり、食欲が増すこともあるため 太りやすくなる子もいます。そういった場合は去勢手術した子用のフードなどへの変更により体重をコントロールすることは可能です。

・いつからできますか?
体がある程度成長した6ヶ月齢以降での手術をお薦めしています。高齢になってからでも手術は可能ですが、病気になっていたり 体の機能が低下していたりしリスクが高くなるので、なるべく早期に手術することをお薦めします。

以前は動物は痛みに強いと言われていましたが、現在では動物も当然痛みを感じていると言われるようになってきました。

当院では手術の痛み・不安をできるだけ少なくするために複数の鎮痛薬の併用、炎症を軽減させるための手術を心がけています。

犬の避妊手術

避妊手術とは左右の卵巣および子宮を摘出します。全身麻酔で行なわれます。 当院では避妊手術は1泊入院となります。(予約制)

手術は少なからず体に負担がかかります。 その負担を考えると避妊手術を希望されない飼い主様もいらっしゃると思います。 しかし避妊手術によって生殖器に関連する病気の予防、問題行動の抑制などのメリットがあります。

・メリット
1.望まれない妊娠の防止
2.病気の予防効果
■ 乳腺腫瘍(雌犬では全腫瘍中約50%を占める発生率が高い腫瘍で乳腺腫瘍の約50%が悪性と報告されています)
■ 子宮蓄膿症(子宮内に膿がたまり死亡率の高い病気です)

初回発情前の避妊手術により乳腺腫瘍の発生リスクが0.5%とかなり減少することが報告されています。 それによると3回目の発情までに手術をすることにより乳腺腫瘍のリスクは減少するようですが、1回、2回と発情ごとに リスクは大きく上昇するようです。

3.発情に伴う症状の軽減
発情時にいつも体調が悪くなる子、偽妊娠で乳房がいつも張ってしまう子など、そういった症状から開放されます。

・デメリット
1.手術自体のデメリット
全身麻酔のリスク。諸臓器への影響などによりごく稀に予期せぬ事態を招くことがあります。出来る限り麻酔リスクを避けるため 手術前の血液検査を行い、全身状態を確認しています。
短頭種(パグ、フレンチブルドックなど)は気道の入り口が狭いため麻酔覚醒後に呼吸困難を来たすことがあります。
2.肥満になりやすい?
術後、発情に伴う体、行動の変化がなくなるため必要とするエネルギー量が減ったり、食欲が増すこともあるため 太りやすくなる子もいます。そういった場合は避妊手術した子用のフードなどへの変更により体重をコントロールすることは可能です。

・いつからできますか?
体がある程度成長した6ヶ月齢以降での手術をお薦めしています。できれば前述の理由により初回発情前の手術が望ましいです。高齢になってからでも手術は可能ですが、病気になっていたり 体の機能が低下していたりしリスクが高くなるので、なるべく早期に手術することをお薦めします。

以前は動物は痛みに強いと言われていましたが、現在では動物も当然痛みを感じていると言われるようになってきました。

当院では手術の痛み・不安をできるだけ少なくするために複数の鎮痛薬の併用、炎症を軽減させるための手術を心がけています。

犬のワクチン

ウイルスによる伝染病は治療が困難な場合が多く、予防が大切です。

子犬は母親譲りの免疫を持っている場合が多く、その時期のワクチン接種は効果があまり見られないことが多いです。 そのため生後2ヶ月頃から3~4週間隔で2~3回程度のワクチン接種が必要です。詳しくは当院までお問い合わせください。

ワクチン接種後すぐに免疫力がつくわけではありませんので2~3週間は他の犬との接触はお控えください。

成犬になったら1年に1回の追加接種または抗体検査が必要です。

実際に抗体価(ワクチンの効果)を測定してみるとワクチン接種1年後、ウイルスによっては十分な抗体価が維持できていない例も存在することから 予防という観点で毎年接種もしくは抗体価の測定をおすすめします。

ワクチン接種後の注意
ワクチン接種後は2~3日間は出来るだけ安静にして激しい運動やシャンプーなどはお控えください。 接種後まれに、急に具合が悪くなったり、顔が腫れたりすることがありますので、接種後はよく様子を観察してください。

混合ワクチンに含まれる各種伝染病の説明です。何種を接種するかなどは診察時にご相談ください。

ジステンパー
発熱、目やに、鼻水、嘔吐、下痢などの症状を起こし、痙攣など神経症状を起こすこともあります。死亡率も高い伝染病です。

パルボウイルス感染症
下痢、嘔吐などを起こし、死亡率が高い伝染病です。

犬伝染性肝炎
嘔吐、下痢などを示し肝炎を起こします。死亡する例もあります。

犬伝染性喉頭気管炎
咳、クシャミ、鼻水などの症状を示します。いわゆる「ケンネル コフ」の原因のひとつです。細菌などと混合感染を起こすことも多く症状が重篤になります。

犬パラインフルエンザ
咳、クシャミ、鼻水などの症状を示します。「ケンネル コフ」の原因のひとつです。細菌などと混合感染を起こすことも多く症状が重篤になります。

犬コロナウイルス感染症
嘔吐、下痢などを起こし、他のウイルスや細菌などの二次感染を起こすと症状が重くなることもあります。

犬レプトスピラ感染症
急性の腎炎、肝炎を起こし死亡率の高い病気です。主にねずみの尿を介して感染します。

ワクチンアレルギーとは

ワクチンアレルギーとはワクチンの成分に体が過剰に反応し、さまざまな症状を引き起こすことです。ペットのワクチンアレルギーの具体的な症状について解説します。

ワクチンアレルギーの実際の症状は?

せっかくのペットの病気予防のためのワクチンも、ごく稀に副反応でさまざまな症状がでることもあります。 軽いものでは痒みやじんましん、顔の腫れ、下痢や嘔吐。 症状が重くなってくるとふらつき、呼吸が苦しいなどの症状がでてくることも。

さらにひどい場合、急性のアナフィラキシーを引き起こし、ワクチン接種後、数分から30分程度でぐったりし、命の危険のあるショック状態になることもあります。

アナフィラキシーのような重篤なものの発生頻度は約0.07%と報告があります。 このような重篤な症状は接種後数分から30分以内に起こることがほとんどのため 接種後30分程度は動物病院内で待つか、動物病院へすぐ受診できる環境にいたほうがよいでしょう。

顔が腫れる、じんましんなどの比較的軽度の症状は数時間から1日経って発症することがあります。 ワクチン接種当日から翌日くらいまではペットの様子は普段以上にみてあげた方が良いでしょう。 かゆみからかきむしってしまう事もあるため、気がついたら動物病院へ受診しましょう。

副反応は初めてのワクチン時だけでなく、毎年の接種時は問題なかった場合でも、急に起こることがあるので注意が必要です。

ワクチンはごく稀に副反応がみられることがあるので、できれば打ちたくない気持ちもあると思います。 感染症予防には大切なものなのでしっかり受けたほうがいいですが必要以上に打つものでもないので、抗体価測定など動物病院に相談しましょう。

犬の狂犬病予防接種

当院にて狂犬病予防接種を行っています。

狂犬病予防法により生後91日以上の犬には登録と狂犬病予防注射が義務付けられています。

犬の登録・注射済票の交付は当院から後日郵送になりますのでご了承ください。
ワクチン接種当日は狂犬病ワクチン接種証明書を発行致します。

狂犬病は日本国内では各種対策により1956年以来、発生はみられませんが世界的には日本、イギリス、オーストラリアなど一部の国を除いて 全世界で発生しており年間約55000人もの人が亡くなっています。

2013年には日本と同じ狂犬病清浄地域であった台湾で52年ぶりに野生動物および飼育犬で狂犬病の発生がありました。

日本国内でも接種率の低下が続けば、諸外国からの狂犬病ウイルスの侵入により発生の恐れは当然ありますので 接種は必要です。

犬のマダニ予防の重要性

マダニはダニ類の中でも大型で、吸血時に病原体を橋渡しする病原体媒介動物です。
マダニは山林だけでなく公園や河川敷などでも生息可能なため、身近な場所でも吸血されます。
つまり、いつものお散歩コースでも感染する可能性があるということです。

マダニの活動時期は春先から夏にかけて吸血動物に寄生し、産卵します。
この卵から孵化した幼ダニが秋に大発生し、さらに吸血するため、春から秋頃まで寄生の可能性があります。

マダニ媒介性感染症の予防
マダニ媒介性感染症の病原体は唾液を介して動物に伝播します。
刺されてもすぐに病原体が伝播するわけではなくタイムラグがあることがわかっており 犬に重篤な貧血を引き起こすバベシア原虫の伝播は吸血開始後2日以降と考えられています。

最近、人で報告が増えてきている重症熱性血小板減少症候群(SFTS)は調べた範囲では伝播のタイミングは不明です。
SFTSウイルスに感染した犬や猫から人への感染の可能性も示唆されています。

そのためマダニの予防薬は速効性が大切になってきます。
薬の種類にもよりますが、現在当院で使用しているマダニの予防薬(チュアブルタイプ)は 12時間後には99%、24時間後には100%の駆除効果があります。

その他、大切なことは動物の体についたダニを無理に取ったり、つぶしたりすると 病原体に感染する恐れがありますのでマダニの付着が確認され、容易に取れない場合は動物病院への受診が必要です。

マダニの予防にはスポットタイプ(皮膚にたらすもの)、チュアブルタイプ(おやつタイプ)がありますが 効果の速効性、シャンプーをしても効果が落ちないことなどを考慮するとチュアブルタイプがおすすめです。
春になったら動物病院で処方してもらいましょう。

異物の誤食・誤飲

犬や猫は子供と同じように何でも口に入れてしまう傾向があります。異物を誤食する子は懲りずに何度も繰り返すことが多いので気をつけたいです。

異物の誤食で危険なものですぐに思い浮かぶのが、お腹に詰まってしまうような大きな異物、薬品、タバコなど私たち人間でも危険なものですが、実は人が食べても大丈夫なものでも動物が食べてはいけないものが意外に多いので注意が必要です。

一般に広く知られているのはタマネギですね。タマネギに含まれる有機チオ硫酸化合物が犬や猫に貧血を起こしてしまいます。これは加熱調理しても変化しません。タマネギの他にネギの仲間であるラッキョウ、ニラ、ガーリックなども同じように危険です。 タマネギ中毒は実際に動物病院でよく診る中毒です。

チョコレートも犬たちにとっては誤食をしやすいものです。チョコレートに含まれるテオブロミンやカフェインが中毒の原因となり、嘔吐や下痢といった症状から興奮、発作といった命に関わる症状まで発生します。

甘味料のキシリトールも犬では中毒になる可能性があります。一般的にキシリトールは健康に良いイメージがありますが、人と異なり犬では多量に摂取すると低血糖や肝不全を起こしてしまい命に関わることもあります。

あまり知られていないものはぶどうやレーズンです。犬ではぶどうやレーズンを食べた後に急性腎不全を発症し死亡した例が報告されています。発生する原因はまだ詳しくはわかっておりませんが、 一般にあまり知られていない情報のため誤ってペットに与えてしまうことがありますので注意が必要です。

もし異物を飲み込んでしまったら、「いつ」「何を」「どのくらい」飲み込んでしまったのか確認してすぐに動物病院に連絡し、指示を受けてください。

薬の飲ませ方のコツ

いざ自分のペットに薬を飲まそうとしたら大変だった、できなかったということありませんか? 飲めないまま様子をみていたら、さらに具合が悪くなってしまうということも。 ペットに内服薬を飲ませる際のちょっとしたコツについてお伝えしたいと思います。

錠剤の場合

錠剤の基本的な飲ませ方は犬猫の口を開いてノドの奥に錠剤をポトンと落とす感じです。 落とせたらすぐに口を閉じて喉(首元)をさすったり、事前に水を吸って用意しておいた注射ポンプやスポイトで水を飲ませます。 ゴクリと喉が動いたらうまく飲めているはずです。

ここでのポイントは口をしっかり開けて口の出来るだけ奥に錠剤を置いてくることです。 薬を投げ入れてはいけません。気管に入っては大変です。

猫は口が小さく人の手が口の中に入らないので、少し上向き加減で口を開いたら、喉の奥めがけて薬をやさしくポトンと落としてあげてください。

口をうまく開けるには、動物の口に左右から人間の親指と人差し指を入れると 口が少し開きますので、それをもう少し広げてください。

それ以外には、一口大の缶詰に錠剤を包んで与える方法も食べてくれることが多いです。 食欲がすごく旺盛な犬の場合はドライフードと一緒のお皿に錠剤を入れてもそのまま食べてしまう子もいます。

粉薬(散剤)の場合

薬を少量の水に混ぜて注射ポンプに取り、犬歯の後ろから口の中に注射ポンプの先を入れて少しずつ飲ませます。 薬を与えるのに慣れていない場合や口を開けるのを嫌がる子はこの方法がやりやすいです。 薬を溶かす液体を水ではなく、ぬるま湯にしたり、ジュースや肉の煮汁にすると飲みやすくなることもありますよ。

缶詰などウェットタイプのフードに粉薬を混ぜて与える方法もあります。 ただ、粉にすると苦い薬ではどちらの方法でも飲んでくれないことが多いのが難点です。

投薬補助食品を使う

これらの基本的な薬の与え方ではうまく投与できないという場合は投薬補助食品を使用するとうまく薬を与えられることが多いです。 錠剤や粉薬を中に入れて丸めると外からは薬が見えなくなり、薬の味もしなくなります。

薬を中に入れる前に、何も入っていない投薬補助食品を少しだけ与えて 事前においしいということを教えて(体験させて)おくと、実際に与えるときに警戒心を抱くことなく食べてくれるようになります。 ぜひお試し下さい。

特に猫ちゃんは毎日の投薬が大変でストレスになります。 こういった補助食品を上手に活用して投薬のストレスから開放されるといいですね。

食欲が少ない時にも薬は与える必要があるので、直接錠剤を口に入れる方法や粉薬を注射シリンジで与える方法はとても大事です。できるようになっていたほうがやっぱり便利。投薬のバリエーションがあると、薬を飲んでくれないときにいろいろ試せるので、普段から色んな方法で与えることを心がけていると、いざというときに困らずにすみますね。

ぜひいろいろな方法をマスターしてください。

腫瘍治療におけるインターフェロン療法

組み換え型イヌインターフェロンγは2005年に犬のアトピー性皮膚炎の治療薬として市販されました。 医学領域においてはヒトインターフェロンγ製剤は肝炎の他、腎臓癌、T細胞性白血病・リンパ腫、悪性黒色腫などに使用されています。

獣医療においても抗腫瘍効果を期待して上皮向性リンパ腫、肥満細胞腫、悪性黒色腫などに対するインターフェロン療法の報告例がいくつかあります。 獣医療においてインターフェロン療法は他の治療法を利用できない悪性腫瘍の場合が適応になると考えられます。 そのため外科手術や化学療法、放射線治療の適応にならない症例、術後の再発予防、他の治療法との併用などが適応でしょう。

まだまだ情報が蓄積されていない治療法のため第一選択にはなり得ませんが、手術や抗がん剤が行なえない、もしくは行ないたくないが 何か効果のある治療を行ないたいという場合には、十分意味のある治療法になり得ると思います。

当院ではインターフェロン療法の効果を高めるために、オゾン療法を併用しています。

腫瘍の検査「細胞診」

体にしこりが発見されたら、その“しこり”が腫瘍なのか、炎症があるのか、脂肪や角質など 腫瘍ではないのかを簡易的に調べる検査です。 手で触れる皮膚などの“しこり”だけでなく、お腹の中や胸の中にある“しこり”も検査をすることが可能です。

検査方法は細い針をしこりに向かって刺し、細胞を採取しますが お腹や胸の中のしこりもエコーを使うことによって採取することができます。

採取した細胞は染色し顕微鏡で調べることによって、病院内で迅速に腫瘍なのかどうかを調べ 細胞の形態からその腫瘍は良性が疑われるのか、悪性が疑われるのかも判断します。 一部の腫瘍は細胞診のみで腫瘍の種類まで診断がつくことがあります。(リンパ腫や肥満細胞腫、組織球腫など)

ただし、あくまで簡易検査なので細胞診の結果では良性が疑われる場合でも、その後の経過が結果と合わない場合は再検査やより詳しい組織検査が必要でしょう。

細胞診の細胞の採取は一般的にはリスクが少ない検査ですので、しこりを見つけたら様子を見ないでまず細胞診を行うことをおすすめします。

メラノーマ(悪性黒色腫)のルペオール療法

ルペオールは植物に含まれる成分で抗炎症作用、抗酸化作用、抗腫瘍効果があります。 細胞レベルでは悪性黒色腫のほか、肺がん、膵臓がん、肝臓がん、前立腺がん、白血病、扁平上皮癌などに効果が認められています。 抗がん剤のような副作用も少ないため、体への負担を少なく治療をすることができるメリットがあります。

ルペオールは特に犬のメラノーマ(悪性黒色腫)に対しての使用例、抗腫瘍効果の報告があり、鳥取大学動物医療センターでも多く使われているようです。

メラノーマは局所での浸潤性も高く、術後の転移も多い癌です。通常は広範囲の外科手術を行い、再発・転移予防に放射線治療や化学療法を行いますが それらを実施しても制御困難なことが多いです。

非常に悪性度の高い腫瘍のため当院では、通常の治療の他に、メラノーマに効果がみられるルペオールの投与を術後実施しています。 外科手術・化学療法に併用してルペオールの投与を行う場合や外科手術後に副作用の少ないルペオールや オゾン療法のような免疫療法を組み合わせて、体への負担を極力減らした治療を行うことも可能です。

また現在ではメラノーマへの使用例が主ですが、その他の腫瘍においても抗腫瘍効果を期待して投与していくこともできます。

まだ確立された治療法ではありませんが、ご希望の方は当院までご相談ください。

皮膚肥満細胞腫

皮膚肥満細胞腫は犬の皮膚腫瘍で最も発生率の高いガンです。
動物が太っていることと、肥満細胞腫には何の関係もありません。

腫瘍の形態は湿疹様の小さなものから硬く隆起したもの、柔らかく境界不明瞭なものなど様々です。 腫瘍の経過も緩やかに増大していくものから、急速に増大、転移し、全身状態が悪化して亡くなるなど 非常に悪性度の高いものまで幅広くあります。

予後に影響する因子も多くありますが、発生部位が皮膚粘膜移行部、鼻鏡部、爪床、内臓は悪いことが多く 犬種ではボクサー、パグ、ゴールデンレトリバーは予後が良いものが多い傾向があります。

肥満細胞腫の診断には針吸引生検による細胞診で診断がつくことが多いです。 予後因子であるグレード分類は病理組織検査が必要のため、切除後、腫瘤を病理組織検査に出さないといけません。 肥満細胞腫は悪性腫瘍のため、細胞診による診断後は血液検査、レントゲン検査、エコー検査などを行い ステージ分類を行い、治療の方法を決定します。

皮膚肥満細胞腫の治療は外科適応であれば、手術により十分な余裕を持って切除をすることが第一選択になります。 切除後の肥満細胞腫のグレード、切除状況、病理検査の結果により 経過観察を行う例、放射線治療、ビンブラスチンなどの抗がん剤、イマチニブやトセラニブなど分子標的薬の 投与が必要な例などに分かれます。

当院では、術後の放射線治療や抗がん剤治療が必要とされるが、さまざまな理由により実施できない場合などに 負担の少ないインターフェロン療法オゾン療法を実施することもあります。

肥満細胞腫は急に具合が悪くなることも多いため、早期診断、早期治療が必要です。

乳腺腫瘍

犬の乳腺腫瘍は未避妊の雌犬で最も多く見られる腫瘍で、雌犬全体の腫瘍の約半数を占めます。
犬の乳腺腫瘍の約半数は悪性であり、さらにその半数は発見時にすでに転移していると言われています。

性ホルモンは雌犬の乳腺腫瘍の発生に関与しており、卵巣摘出術が実施された年齢は乳腺腫瘍発生の リスクと関係しています。
卵巣摘出時期 乳腺腫瘍の発生率
初回発情の前 0.05%
初回発情後から2度目の発情の前 8%
2度目の発情の後 26%

予後に関連する因子
・ステージ
・潰瘍形成、腫瘍の浸潤
・病理組織学的検査、増殖活性
・卵巣摘出術(乳腺腫瘍手術時点において未避妊では生存期間が短い)など

治療の第一選択は外科切除です。
切除の範囲は生存期間などに影響なく、組織学的に完全な切除マージンが予後に影響します。

多くの研究では乳腺腫瘍の手術と同時に卵巣子宮摘出を行っても、生存期間や無病期間に差はないと 報告していますが、ある報告では乳腺腫瘍の摘出と同時に卵巣子宮摘出を行った犬の 生存期間の延長が報告されています。

浸潤性や転移の疑いのある場合は、術後に化学療法や非ステロイド系COX-2阻害剤を投与することがあります。

犬の乳腺腫瘍は雌犬にとってよく発生する腫瘍ですが、避妊手術により予防も可能な病気です。
ぜひ早期の避妊手術をお考え下さい。
治療により制御可能な例も多いため胸にしこりを見つけたら、早めの動物病院への受診をお勧めします。

アロペシアX(脱毛症X)

ポメラニアン、トイプードル、サモエド、シベリアンハスキーなどの犬種に好発する皮膚病です。 症状は頭部と四肢を除いた部位に痒みのほとんどない脱毛が起こり、 初期症状は毛の量が少なくなったり、硬い毛が目立つようになることが多いです。 性ホルモンの不均衡が原因とも考えられていますが、詳しい原因はわかっていません。

診断は脱毛症を起こす他の疾患を除外するため、一般的な皮膚検査、血液検査、ホルモン検査、皮膚病理組織検査などを実施します。 治療としては去勢手術、メラトニン、トリロスタン、サプリメントなどを投与しますが、経験上、発毛まで時間がかかることが多いようです。

発毛した後も数年後に再発することもあります。

治療前です
体幹部全体が毛がまだらになり、プードルの毛とは思えない硬い毛で被われています。

治療後です。
やわらかい元通りの毛が生えてきました。

食物アレルギー

犬の食物アレルギーではIgEの関与したⅠ型アレルギーとリンパ球の関与したⅣ型アレルギーがありますが Ⅲ型アレルギーの関与も指摘されるなど、未だ解明されていないことも多い病態です。

食物アレルギーに特徴的な症状は
・目、口周囲、背中、肛門周り、会陰部の痒み、皮膚炎
・1歳未満からみられる痒み(初期は皮膚炎を伴わないことが多い)
・通年性の痒み
・1日3回以上の排便やオナラ(下痢、軟便が続くこともある)

その他、外耳炎、首、脇、肘、内股、指端などもアトピー性皮膚炎と同様に痒みや皮膚炎が起こります。

食物アレルギーの発症時期は?
食物アレルギーは通常、1歳になる前から症状があることがほとんどです。 症状が軽度のため皮膚病のサインだと気づかないこともあります。 たとえば、皮膚の見た目はきれいなのに頻繁に耳や体をかいていたり手足の先を舐める仕草がよくありませんでしたか?

ドックフードの種類を変えたときにそのドックフードにアレルゲンが含まれる場合、成犬になって初めて症状が出ることもあります。

診断は上記の症状に加え一旦、除去食(原因アレルギー食を除いたもの)に変更し症状が改善するかどうかをみます。
この除去食試験の反応を見る期間は2ヶ月です。
3週間で症状が改善する例は20~30%程度なので反応が無いからといって、すぐ食事を変えるのは好ましくありません。

ちなみに食物アレルギーによる軟便や嘔吐は症状の改善が早く 1週間ほどで治療に反応があるかどうかわかります。

どの食事に変更すればよいか検討するためにIgE検査、リンパ球反応検査などのいわゆるアレルギー検査を参考にすることも多いです。
ただし、これらアレルギー検査結果の解釈・評価には様々な注意事項など知識が必要となります。

犬の食物アレルギーの検査結果の解釈

犬の食物アレルギーにはⅠ型過敏症(IgE)とⅣ型過敏症(リンパ球)の2つのタイプがあるため 食物アレルギーを起こさない除去食療法を行うにはIgE検査とリンパ球反応検査を行う必要があります。 これが人と異なる点です。

犬ではリンパ球反応検査で食物アレルゲンが検出されたのは80%、 IgE検査によって検出された食物アレルゲンは30%程度と言われています。
そのためコストは高くなりますが、食物アレルギーを疑う場合は IgE、リンパ球反応検査と両方の検査を行う必要があります。
アトピー性皮膚炎を疑っている場合はIgE検査のみで構いません。

アレルギー検査を行える検査会社は多数ありますが、リンパ球反応検査を行える検査会社は限られているので 検査の外注先にも注意が必要です。

アレルギー検査は万能ではなく、検査結果を元にアレルギーの原因になる食物を除外しても痒み症状が改善しないこともありますし、検査上は異常がない食物も与えると痒みが出てしまうこともあります。 ドックフードの原材料を選ぶ際の1つの指標程度に考えたほうがよいでしょう。

動物病院で採血をして検査をすることができます。

犬の食物アレルギーのドックフード選び

アレルギー検査結果(IgE、リンパ球反応検査)からアレルギー反応のない原材料を 選ぶことになりますが、その際に主原料を選ぶときに食物間の交差性を考慮したり 油やスターチに残留するアレルゲンタンパクも考慮するとより確実です。

犬では牛肉←→ラム、卵←→鶏肉の間にアレルゲンの交差性が示唆されていますが 詳しくはわかっていません。 そのため、ある程度人の報告を参考にします。
当院ではサケ←→その他の魚類、牛乳←→ヤギミルクは最低限控えて 牛乳←→牛肉、小麦←→大麦、ライ麦など穀類も可能なら控えます。
わかりやすい考え方としては検査で異常値を示した食物と同一の種、属に分類される食物は避けるというものです。

油は少量のタンパク残留が報告されており、このような少量の残留タンパクに 反応する過敏な例もあるので、可能なら食べ物を選ぶ際に考慮します。

低アレルギー食によく含まれている、コーンスターチはトウモロコシから抽出した糖類ですが 残留タンパクはごく微量と言われており コーンスターチによってトウモロコシアレルギーによる皮膚症状は起こさないと言われています。 当院ではトウモロコシアレルギーの例では可能なら避けますが 選ぶ食事がなくなる場合は、上記の報告より問題ないと考えます。

このようにアレルギー検査結果は単純に陽性、陰性だけで判断するといい結果が得られないことがあります。

減感作療法

減感作療法とはアレルゲンを少量ずつ投与し、その投与量を徐々に増やしていくことによって過敏なアレルギー反応を減らしていく治療法です。
通常のアトピー治療と異なり、アトピーを根本的に治療する方法です。

従来の犬の減感作療法は通院回数の多さや治療期間の長さ、国内に使用できる薬剤が無いなど 様々な問題がありましたが、現在日本国内で販売されている「アレルミューンHDM」を使用することにより
「1週間に1回の注射を6回投与」 治療期間を短縮することが出来ます。
「従来に比べ安全性、有効性の向上 過敏反応の軽減、約70%の改善率が報告されています。

実際の治療の流れ
1.除外診断

感染性(寄生虫、細菌、真菌)の皮膚炎、食物アレルギーなど、アトピー性皮膚炎以外の かゆみを起こす皮膚病を各種検査、試験治療、アレルギー検査、除去食試験(低アレルギー食のみで2ヶ月間生活)などを 実施し、除外していきます。

2.犬のアトピー性皮膚炎の診断
除外診断および治療反応、アトピー性皮膚炎の診断基準などを考慮し、診断していきます。

3.原因アレルゲンを調べるアレルゲン特異的IgE検査
アレルミューンHDMの適応になるかどうか検査が必要です。

4.アレルミューンHDMによる治療開始
1週間に1回の注射、6回投与による反応を見ます。
反応は様々ですが、効果はゆっくりと現れることが多いようです。

現在、犬のアトピー性皮膚炎の治療薬剤は様々あり、動物の状態、飼い主様の希望などにより 選ぶことが出来るようになっています。
従来からあるステロイド、シクロスポリンから新しいオクラシチニブ、 インターフェロンやオゾン療法などありますが、基本的にはどの治療も継続が必要になります。

その点、減感作療法は反応があれば、休薬することができるので
根治治療を希望する場合や長い治療から開放されたい場合などは減感作療法をおすすめします。
当院にて実施可能ですのでご相談ください。

毛包虫症(ニキビダニ)

犬の皮膚に常在する寄生虫が増加することによって、様々な皮膚症状を起こします。
発症時期により若年発症型と成年発症型に分類されます。

皮膚症状は脱毛、フケ、赤み、湿疹など、その他の感染性皮膚炎に類似します。 また、指端部では指間の腫れなども起こします。

通常、他の動物や人には伝染しません。

皮膚掻爬検査にてニキビダニを検出することにより診断しますが なかなか検出できないこともあります。
皮診から疑わしい場合やその他皮膚炎の治療に反応がない場合は 何度か検査を繰り返します。
ニキビダニの治療は時間が長くかかるため、試験的な治療は向きません。

成年発症型では副腎皮質機能亢進症、甲状腺機能低下症、糖尿病、腫瘍など 免疫を低下させる基礎疾患があることがほとんどのため ニキビダニの治療と並行して、基礎疾患の検出のための各種検査 および基礎疾患の治療が必要になります。
(基礎疾患がある場合、殺ダニ剤の投与だけでは治りません)

殺ダニ治療は通常、長期間の治療が必要で皮膚症状が改善しニキビダニが検出 されなくなってから1ヶ月程度、治療を継続します。 再発もあり、定期的な治療が必要になる例もあります。

殺ダニ剤は毎日投与するものから、週1回投与、3ヶ月に1回投与など さまざまな薬が効果を発揮しますが犬の場合、当院では投与の簡便さ 治療効果の観点から3ヶ月に1回投与の製剤を使うことが多いです。

また、免疫力の低下から発生することがほとんどのため 治療反応率の改善や治療期間の短縮のために 可能ならオゾン療法など免疫賦活治療も併用します。

インターフェロンによる犬の再発性膿皮症の予防

犬の表在性膿皮症は皮膚の常在菌に起因する細菌性皮膚炎です。
抗生物質の内服やシャンプー療法を行うことで多くの犬は改善します。

ただし一旦は改善しますが早期に再発する例も比較的よくあります。
原因として犬の基礎疾患の存在があります。
基礎疾患としてアレルギー性皮膚炎、ホルモン疾患、糖尿病などの代謝異常、腫瘍性疾患などが考えられ これらの管理、治療も必要です。

一方でこれら基礎疾患も見つからず、十分期間抗生物質の内服をしているにも関わらず 膿皮症の再発を繰り返す例も存在します。
その場合、抗生物質の変更を繰り返したり、抗生物質の長期投与を行ったりする例もあり 薬剤耐性菌の発生を引き起こす原因にもなります。

こういった基礎疾患が見当たらない犬の再発性膿皮症の治療管理に インターフェロンγ(インタードック・アトピー性皮膚炎の治療薬)を使用することにより 再発するまでの期間が延長し、管理がうまくいった例が報告されています。

当院でもこの報告を受けて、犬の再発性膿皮症の治療管理にインターフェロン(インタードック)やオゾン療法を実施しています。

マラセチア性皮膚炎

マラセチアは外耳、口周囲、肛門などに常在する酵母菌です。
マラセチア性皮膚炎はマラセチアに対する過敏反応や過剰増殖が原因で起こります。

増殖する原因はアトピー、食物アレルギー、ホルモン疾患、角化異常など基礎疾患を有していることがほとんどです。
そのため頻繁に再発する場合は基礎疾患を探すことが重要になります。

症状:軽度から強い痒み、脱毛、表皮剥離、赤み、脂漏。
慢性化すると苔癬化、色素沈着などアトピーの慢性化病変に類似します。
特有のにおいがするのも特徴です。

診断:皮膚のスタンプ標本を染色し顕微鏡で観察します。
100倍の視野で2個以上のマラセチアが検出される場合は過剰に増殖しているといえます。

治療:抗真菌剤含有のシャンプーで週1~2回シャンプーを行います。(頻度は状態によります)
症状が強い場合は抗真菌剤の内服を行いますが、当院ではイトラコナゾールのパルス療法(週に2回投与)をまず2~4セット行います。
反応が悪い場合は1日1回連日投与に切り替えます。

基礎疾患がない場合はこれで改善しますが 反応が乏しい場合は基礎疾患を疑い、血液検査、ホルモン検査を行います。
アレルギーが疑われる場合はアレルギー検査や試験的な治療も行います。

再発予防のためには抗真菌剤含有シャンプーで定期的に洗っていくことが必要です。