フェレットの副腎疾患

2018/12/4

札幌市東区あつき動物病院です。フェレットの副腎疾患の診断編です。

(1)はじめに
発症は平均3.5歳。早いフェレットでは2歳ごろから。
詳細な原因は不明ですが以下の関与が指摘されています。
・遺伝(ヒドロキシラーゼ欠損)
・性成熟前の性腺摘出
・季節繁殖動物の室内飼育
・食餌

下垂体由来ではなく、ほとんどが副腎由来の疾患である。
副腎皮質細胞変性(出血、壊死、結節、嚢胞、過形成)
副腎腫瘍(副腎皮質腺種、腺癌、褐色細胞腫、奇形腫、平滑筋肉腫)
84%が片側性で左副腎が84%、右副腎が16%とされています。

(2)病歴、臨床症状
・脱毛 (尾部や腰背部から始まり体幹、頭部へと進行する脱毛、なめしたような皮膚。80%以上に認められる。長日に入る春に尾部のみが脱毛する場合、換毛不全の可能性もあります)
・掻痒 (30%以上に見られ体幹背側で多く認められる)
・削痩 (四肢や上半身の筋力低下)
・肥満 (下顎の両側や下腹部の脂肪蓄積)
・陰部腫大 (避妊雌の50%以上に認められる。漿液粘性の分泌物が見られることもある。未避妊雌の発情や卵巣疾患、避妊雌の卵巣遺残との鑑別が必要)
・乳頭の腫大
・乳腺腫
・子宮断端腫 (陰部腫大、頻尿、排尿困難がみられる)
・排尿困難、尿漏れ (前立腺の過形成や嚢胞性の変化。子宮断端腫)
・行動の変化 (嗜眠、攻撃性)
・体臭の変化 (皮脂腺の分泌が亢進し、体臭の増加、被毛粗剛、べたつきが起こる)
・多飲多尿
・貧血 (エストロジェンによる骨髄抑制)
・脾腫

*繁殖季節である長日環境(春から夏)で悪化、短日(冬)で改善する傾向がある。

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知っておきたいフェレットの生理的特徴
季節繁殖動物
発情季節 ♀3-8月 ・ ♂1-6月
短日条件:毛色薄い、皮脂腺活発、脂肪蓄積
長日条件:毛色濃い、皮脂腺不活発、脂肪減少
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鑑別診断 卵巣遺残によるエストロジェン中毒(脱毛、陰部腫大、再生不良性貧血、腸炎、紫斑)

卵巣遺残の診断:飼育初年度、発情季節の長日環境(春から夏、3-8月)からの発症
エストロジェン測定
エコーにて卵胞嚢腫の確認
試験開腹

卵巣遺残の治療:
hCG 100IU/head IM or SC 7日毎
卵巣子宮摘出術

(3)診断
触診では左腎臓の頭側にコリコリとした左副腎の腫大が触れることが多い。右副腎は経験上、触診は困難と思われます。

超音波検査は非常に有効ですが、副腎疾患の50%しか診断できなかったとする文献もあります。
副腎の正常サイズはいろいろな文献がありますが、5mm以下とされています。
副腎はエコーフリーに近い円形の腫瘤として描出され、正常なサイズでは確認できないことが多い。
実際の手技としては始めに触診にて腎臓の位置を確認し、背側をアルコールにて毛を分け、高Hzのプローブを使い、左副腎は左腎頭側やや正中より、右副腎は右腎頭側、後大静脈、肝臓の辺縁をスキャンします。
同時に前立腺や子宮断端部も確認します。

レントゲン検査は診断方法としてはあまり有効ではありませんが、併発疾患のスクリーニングのために行います。
まれに副腎の石灰化がみられることがあり、その場合は腺癌の可能性が高いようです。

一般血液検査では副腎疾患を疑うような結果は通常ありませんが、併発疾患のスクリーニングのためにも行なっています。

血中ホルモン濃度の測定(犬のクッシング症候群と異なり性ホルモンが上昇する)
・エストラジオール
・デハイドロエピアンドロステロンサルフェート(DHEA-S)
・アンドロステンジオン
・17α-ハイドロキシプロジェステロン
のうち1つ以上が上昇するといわれています。

外注検査で測定できますが検査代が数万円とかなり高価なため検査頻度は高くありません。
まれに(副腎疾患の7%)コルチゾールの上昇がみられるため、症状や血液検査結果によってはコルチゾールの測定も考慮します。

試験的投薬での反応を観察するのもひとつの手段です。

試験開腹術
サイズの増大、いびつな形、コリコリとした感触、変色、血管新生などがある場合は異常の可能性が高い。
摘出した臓器は病理組織学的検査を行ない確定診断とします。

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以上のような病歴、症状、各診断法により副腎疾患を仮診断していきます。
長くなったので各治療法については次回、掲載していきます。

札幌市でフェレットの副腎疾患の診断治療はあつき動物病院へご相談ください。