フェレットの副腎疾患 - 治療方法

2018/12/4

札幌市東区あつき動物病院です。フェレットの副腎疾患治療法編です。

副腎疾患の治療には外科治療および内科治療がありますが、オペ適用でない理由がない限り基本的には根治治療である外科を検討します。

手術適応として以下の3点を検討します。
・できれば5歳まで
・一般状態良好
・インスリノーマ、リンパ腫、心筋症などを併発していないこと
インスリノーマに関しては軽度の場合は開腹時に併せて摘出することも検討します。

副腎の両側摘出では術後、問題ない場合、アジソンになる場合、死亡する場合があり両側全摘出、部分摘出については議論のあるところです。
十分説明、相談した上で術式を検討します。
開腹時には副腎のほかに胃、脾臓、膵臓、肝臓、リンパ節も確認しておきます。
副腎を操作する時に急激に不整脈や徐脈になることがあるので注意が必要です。

内科治療
臨床症状の改善、QOLの維持を目的とした治療法で抗腫瘍効果はありません。
衰弱している症例、併発疾患が重篤、片側副腎を摘出済み、手術を希望されない場合などに適応されます。

1.酢酸リュープロレリン(リュープリン)
GnRHアナログ。GnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)として作用し、一過性に下垂体-性腺刺激作用がみられるが負のフィードバックにより下垂体からのFSH(卵胞刺激ホルモン)、LH(黄体刺激ホルモン)の産生、放出が低下する。
投与量として100μg、250μg、500μgとさまざまな文献がありますが、高価な薬であるため経験的には250μg/head 皮下注射 4週間毎で投与していますがほとんどの症例で効果を示してくれます。
4回投与しても効果が少ない場合は増量を検討します。
注射剤を沈殿しないように泡立てない程度によく撹拌してロードーズシリンジに分注して冷凍庫で保存する。(-40℃で保存が理想とも言われています)
フェレットでの副作用としては体のほてり、注射部位の硬結が見られるときがあります。
臨床症状は時期などにもよりますが約1ヶ月で改善するが2年程で効きづらくなることが多いようです。

2.メラトニン
視床下部に作用してLH-RHの産生と放出を抑制する。
0.5~1.0mg/kg/日 PO SID
日の出から8~9時間後に投与する方法もある。
効果の印象としては少しよくなる程度。

3.アナストロゾール(アリミデックス)
アロマターゼの阻害によりテストステロンからエストロゲン変換を抑制する。
臨床症状が改善されるまで、0.1mg/kg PO SID
その後、1週間投薬して1週間休薬を繰り返す。
アンドロゲン受容体ブロッカーとの併用は禁忌

オスにおける前立腺疾患は早期に異常な副腎を摘出できれば改善できるが、嚢胞性変化の進行や膿瘍となると完治は難しく副腎疾患の治療、前立腺に対する外科処置、抗前立腺薬の併用を行なう。
抗前立腺薬:アンドロジェン受容体ブロッカー
ビカルタミド(カソデックス)5mg/kg PO SID 1週間毎 投薬、休薬を反復する。
フルタミド(オダイン)10mg/kg PO BID
酢酸クロルマジノン(プロスタール)2mg/kg PO SID

フェレットの副腎疾患は適切な時期に適切な治療を行なえば良好なQOLが得られる場合が多いですが、時期を逃したり、併発疾患によってはQOLの維持も難しい症例も数多く経験します。
最近ではこの他にも治療法となり得るものが海外の文献にはあるので、使用する機会がありましたら紹介したいと思います。

札幌市でフェレットの副腎疾患の診断治療はあつき動物病院へご相談ください。